15世紀末、パリ。
街の中心にあるノートルダム大聖堂の鐘楼に、カジモドという鐘つき男が住んでいた。
大聖堂の聖職者・フロローに拾われ、育てられたカジモドは、その醜い容姿から大聖堂の外に出ること
を許されず、いつも塔の上から街を眺め、外の世界に憧れを抱いていた。
ある日、パリの街に移動民族・ジプシーの一団がやって来る。ジプシーを嫌悪するフロローはカジモド
を利用しジプシーを一掃しようとするが、美しい踊り子・エスメラルダと出会い、一目で心を奪われて
しまう。
聖職者として許されない感情に苛まれながら、歪んだ愛情を募らせてゆくフロロー。
一方で、
フロローの従順な下僕であるカジモドも、エスメラルダの内面の美しさに触れ、生まれて初めての愛情
を募らせてゆく…。
ディズニー映画の名作『ノートルダムの鐘』。
その原作である『ノートルダム・ド・パリ』は、人間誰しもの中にある光と闇、(愛と憎しみ)(美しさ
と醜さ)(尊敬と差別)など、様々な対比の中で人間の本質を描いた作品です。
その外見の醜さから怪物と呼ばれる純真無垢な青年カジモドと、聖職者でありながら内面に醜さを持つ
怪物、フロロー。
対極的な二人の「怪物」のエスメラルダに対する愛情や欲望、様々な登場人物たちの
心の葛藤を通じて本当の怪物とは何か、何が怪物を作るのかと、強く深く問いかけてきます。
人を立場や見た目だけで判断してはならない。
差別や偏見への批判と、人間の尊厳の重要性。
普遍的で
明解なテーマの裏側に、もう一つの「怪物」の存在が隠されています。
この「怪物」の正体こそが、現代の日本社会にも直結する重要な問題であると感じています。
本作品を通して是非、「何が人を人間にし、何が人を怪物にするのか」
感じて頂けたらと願っています。
(脚本・演出 秋葉大介)